我々は太古の時代から、建物に木を取り込んできました。
森林が多く、木が身近にあり、加工しやすい材料として重宝されてきました。
しかし、木造建築には可燃性や耐久性などの課題があり、また、コンクリートの進化によって木造建築は押しやられ、様々な構造物がコンクリートで造られるようになりました。
日本では、明治維新後にセメント工場ができ、コンクリートの構造物が多く建築されました。さらに、戦後の高度経済成長時からは、より強度の高い建材と施工技術よって超高層の建築物が数多く建築され、コンクリートジャングルという言葉も出てきました。
しかし、近年ぬくもりのある木を使った構造物も、技術の進化により、強度や難燃性があがった成果として、大型構造物にも使えるようになってきました。
木造建築は建築材料としての長い歴史とそれに伴う技術の蓄積があります。
日本には植林という文化があります。
森を伐採して木を利用し、その後、植林して将来に繋げていくこというものです。
海外ではそのような文化が浸透せず砂漠となった事例が多くあります。
日本は多くの地域が温帯地方で、木を植林し、再び使えるまで育てることができる気候も文化の継承に役立ったのでしょう。
日本の気候風土にあった木は、今日大きな問題となっている環境負荷という点において、負荷の少ない建築材料であります。
しかし、コンクリートなどの新しい技術によって、古くから伝わる伝統技術が埋もれ、失われつつあります。
新しい技術の普及・一般化は、施工性や経済性などからのみ評価され、環境負荷という評価軸からは改めて評価される必要があります。
今後の状況によっては、古くからの伝統技術に戻るべき点があるかもしれません。
今日的な住み手の住み方(居住者の意向)と古くからの伝統技術と文化の間には、かけ離れた要求水準が存在することは言うまでもありません。
私たちは、これらを整理し、変えていく必要がある部分については、今後、新しい住まい方の文化として、啓蒙していく必要があると考えています。
最近では、構造用集成材やCLTという新しい木材の使い方により、大断面の柱などにも使用されたり、体育館等の大スパンの屋根に使用されたりするなど、新しい技術を使った木造の構造物は増加する傾向にあります。
木造建築物の多様性は広がることでしょう。
木造構造物は、人が生活する場所としては、断熱性、調湿効果、木の香りによる癒し効果などが見直されています。
高齢社会により終の棲家ともいえる建築物が多く作られ、その構造体に地域産の木材を使う事が地域経済の活性化の為にも奨励され、デザイナーや建築士からも木造建築物の提案が増えております。
また、近年は古い木造構造物の修繕や耐震化の工事にも着目し、社寺仏閣の改修工事も手がけるようになりました。
現在は国宝の構造物の改修工事にも着手しております。
今後益々ニーズが深まる木造についても、技術の革新は広がりを見せていくことでしょう。